第138回 春のばら展 コンテスト部門 一等賞・天賞 受賞作品
2021年5月7日
2021年5月8日
2021年5月9日
天地人について
福岡バラ会 西 瑛川
バラ会の賞状がなぜ天賞地賞人賞なのか 1等2等3等でないのかと不思議に思っている人達がおられるとのことで天地人について少しだけ説明します。
天地人は2000年以上前の中国戦国時代の儒学者孟子の教えの中に「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」に由来すると、いわれています。「何かを達成しようとしたとき天の時を得て地の利がなければ成就できない。それらを得ていても人の和がなければ成就できない」という意味です。天の時 地の利人の和が大切であることを孟子は言っているのです。
孟子は儒教において孔子の次に重要な人物で「儒教の教え」は別名「孔孟の教え」と呼ばれ、性善説を主張した人です。天地人は又全世界を形成するすべての要素で地球上にとどまらず万物すべてという意味でもあると説いています。
この孟子の教えを日本で引用したのが上杉謙信で NHK の大河ドラマ天地人のタイトルもその流れでしょう。戦いに勝つことや成功させるためには、三つの条件が必須ということで日本では天地人のことを三才とも呼び「天地人三才」ともいいます。
華道においても床の間と違い棚の座敷飾りが庶民にも普及した江戸時代に床の間に花を飾るようになりました。そのイケバナをおせいかと呼びその基本花型を天地人で説明しています。天は宇宙を表し導くもの 地は大地であり従うもの人は万物のことで和するものとして天地人のそれぞれが調和する姿こそがおせいかの理念であり人としての理想の生き方だと説いています。華道にかぎらず、日本の伝統文化に天地人三才の思想は深く根付いています。
昭和になり、ものに順位をつけ賞状を渡すようになると天賞地賞人賞または金賞銀賞銅賞など三才の賞状が使われるようになりました。
私の小学時代、書は天賞地賞入賞絵は金賞銀賞銅賞でした。
日本では正月のイケバナの代表的な組み合わせや門松に使われる松竹梅は中国の文人画の画題から学んだものです。松竹梅のことを文人画の画題では歳寒三友といいます。松と竹は寒中にも色あせず梅は寒中に花開き寒さに負けない友人として文人の理想を表現したものです。三つ一緒に描かれたり単体でも好んで描かれています。
寿司など高級な順に松竹梅が使われているのは、日本で三才の思想が、影響しているのでしょう。