ページ

ローズ・ふくおか アーカイブス 1989 シドニーばら展に出席して

シドニーばら展に出席して   小山田 即
平成元年/1989 No.5 掲載

 昭和63年4月にオーストラリアの建国200年祭の行事の一環として、第8回世界ばら会議会がシドニーで開催された。日本からもこれに参加するための旅行団が組織されたので、私もこれに加えて戴きばら展やニュージ ーランド方面のばら園を見学して回ることができた。この模様は「ばらだより」No389号に詳細に報告されているが、 私なりに気付いた事を少し書いておきたい。

 私には肝腎のばら展よりも、その前の準備風景の方が印象に残っている。これはやはりこちらの方が人と人とのふれ合いが多かった為であろうか。

 ばら会議が行われたホルム・ビルはシドニー大学の中にある歴史的な建物の一つで、通常レセプションやカンフアレンスに使用されているらしいが、今回はこの建物の大部分が世界ばら会議に提供されていた。

 2階まで吹きぬけの壁に大きな壁画が描かれた大食堂がばら展の展示場になり、隣接した2つの大きな部屋が準備室に当てられていた。この準備室は今朝5時から開かれているそうで、私達も早起きして来たのに、準備室に入るともう沢山の人がステージングにいそいそしんでいた。日本でやっているのとだいぶ異り、スポンジなどつめて開花を調整しているのがめずらしい。

 聞くところによると出品の登録は3日前に締切られてあり、出品者は51クラスもある出品種目の中から、既に自分が出品したいクラスに登録してあるという。主催者側は出品者数や各クラスの出品数がつかめているから、準備も十分に出来るわけである。

 準備室には出品の登録番号を書き込んだ机が並んでいるから、さてどこで活けようかと場所を捜す必要はない。その代りその朝ばらの咲き具合で出品種目を決める訳にもゆくまい。夫々の机の前には大きなビニール袋が取付けられていて、切くずや不用の花など入れるようになっているのには感心した。これで床はきれいに片付いてい た。(写真-1)

 準備室の一角には、紅茶やコーヒーがいつでも飲める ように用意してある。ひと休みしてお茶を飲みながらひとのばらを見ている人、自分の庭に咲いたばらを見てくれと持って来る人など、展示会の前からばらを楽しむ雰囲気で一杯である。

 ばら展は混雑するので、一般に公開する前に出品者・ 大会登録者・報導関係者に先に見せるのが、それでもおすなおすなの盛況である。

 出品花については、房咲きや束にした花が多く、ばら展といえば高芯剣弁の整形花を見なれている眼には、物足りない感じがする。しかしこれはそれぞれのお国振りであろう。51クラスもある出品種目の中には、満開花3輪とか蕾から満開まで4段階などという種目もある。オ ールドローズも流行のようで、出品種目の中にある。

 入賞は各クラスとも4等までで、これに入賞カードと賞金が送られる。ばら展と賞金は私達の感覚にはなじまないが、これも国民性の相違であろう。主要なクラスの優勝者には、青地のきれいなチャンピオン・リボンが贈られる。(写真-2)特定のクラスには、トロフィや銀メダルもあった。

 閉会式のパーティで、ビールとジュースの容器を掲げて、すすめて回っていた人の顔が思い出される。たしか活け込みのとき御夫妻でステージングを楽しんでいた人である。オーストラリアの人と眼が合えば、必ず徴笑が帰って来る。私はオーストラリアが大好きになった。