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ローズ・ふくおか アーカイブス 1993 7月 月例研究会の風景

7月 月例研究会の風景
平成5年/1993 No.7 掲載

 この7月から研究会は共通テーマの話が終わってから、 初級と中上級の班に別れて研究会が行われるようになった。これは、中上級者が5人集って、1つの鉢を前にして、ワイワイガヤガヤしているところの一断片の風景である。


モデルの鉢

1年目の大苗、7寸鉢、品種不明(舞扇あたりかと言う者あり)

  • 図Aは去年の小枝
  • Bは去年の枝に剪定後今春咲かせた切枝に新芽。しかし弱い
  • Cは新梢1回のピンチの形跡あり、その後徒長
  • D去年の弱い小枝。

1.枝の手入れ

A:
いまから剪定時期まで2〜3回はピンチ時期があるから、B、Cを主体にして延ばす。
B:
いまの時点でAもDもどうせ使えないので、切り落とす。
C:
いやそれはまずいんじゃないの。いまの時期は木全体に栄養を蓄積させねばならん時期だから、それはそれとしておいておくことだ。
D:
切花業者のアーチングシュート切り方式は、A、Dは完全に遊ばせといてCのようなシュートが出るのをじっと待つやり方だ。
E:
わたしもC氏と同意見。
B:
以前露地で実験したことがあって、新苗と新梢が出ても伸ばせ放題にしておく方法とシュートが出たら、 初めに出た枝を取り除くやり方の両方は余り成長が変わらなかった。
C:
それとこの場合はちがう。
D:
第1この図からAもDも切り落とすと余りにもさびしくなってしまう。この鉢からは少なくとももう1本はシュートを出させたいもの。この勢いからするとむりだろうが少なくともその考え方だ。
A:
多分もう出ないね。余り構ってもらっていないようだ。

2. 花枝の仕立て方

D:
Bは開花後枝もかなり下の方から切ってあり、そこから新芽でつないであるが、私だったらこうはとてもできない。咲きがらだけを早目にもぎ取り、暫くじっとして、葉からの養分吸収を待つ。
E:
そして、芽が出て来たらどうするの?
C:
上の柳葉のあたりから、新芽が顔を出すが、根気強くかき取る。
D:
よく5枚葉を1枚だけ花の方につけて切ると言われるが、春の花枝の最もスタンダードのやり方はC氏のやり方だと思う。
B:
そんなことしてたら、元気の良い木が揃っているところは大変だ。
D:
だから鉢のようにまだ貧弱でどうしようもない、先が知れている樹について言っているつもり。
C:
丁度新苗を植え込んで、1~2ヶ月経った状態だと 思えば良い。
新苗は花を咲かせよいが、春の花をどうしても咲かせてみたくて咲かせたときの処置の仕方と同じだ。
B:
この鉢は切ってしまってあるのでこれから先どうするか。多分明るくはないね。
C:
この鉢の去年から持っている勢力がどのくらいのものか、Bから途中シュートが出て来ているので、BはますますCに取られてしまうので、Bからは秋にかけて、せいぜい細枝で1本咲かせるのが精一杯のようで、下葉を落さないように、上につないでいくしかないなあ。
D:
せっかくの枝がかわいそうだね。
B:
Cに移ろう。Cは途中シュートだが、1回ピンチはしてあるようだね。
A:
ここのようだね。
E:
ピンチした後に、2本出て来たときどうするの、下をかくの、どうかしたとき下の方が元気がよくなっているときもあるけど。
B:
勢いしだいでぼくは欠いたり欠かなかったり。コンフィやみわくやメルヘンなど元気のいいのは2本仕立てでも良い。
C:
ところが、ガーパーや香久山、千代にこんなことするとだめ。
だから、一般的には、1本仕立てにするように言うべきではないかな。そうこうするうちに、結構次のシュートが誕生するしね。元気が良い方を取るのだろうね。
E:
そのとき上の新梢はステムごと切り戻してしまうの、第2枝のところまで。
C:
頂芽優先で、第一枝の元葉だけ残しておくと、養分の一部がそこに行くので、やはり切り戻しするんでしょうね。
E:
本当かなあ。もともと元気で2枚出るのと、弱々しく2枚出るのとあるよね。元気の2枚のときは、そこのままで良さそうだけど。
C:
先太りの品種、先細りの品種があるからいちがいには言えないなあ。出たシュートの太さもあるしね。
B:
生来ケチなのか元気の良いステムが枝別れしているときは自然に任せてしまう。
E:
その枝別れした後のステムが、どのくらいの太さになるかも。1つの判断基準だと思う。
A:
でもガーパーなどそんなこと下の方からしていたら、良い花にはならないよ。だから間違いなく、経験がモノを言うよこれは。

3. 整枝の考え方

D:
D:秋の整枝までこの枝を持ち込むときにどう管理していけばいいのだろう。
C:
1回ピンチしたのはかなりソフトピンチになっているが、2回目ピンチはしないまま、ここまで上がっ ている。もうヒゲ芽もこれなら3つか4つ来ているだろうが、早目にやらねば、秋も期待できなくなる。
A:
じゃ、今切ろう、ここですか。(ヒゲ芽の見える下のところ指さす)
E:
いや、もう一つ下が良いかも知れない。私はそこのところ。
C:
こんなときは葉柄とステムをこうしてそっと開いてみて、ヒゲがないようだったら、なるだけ上の方を使う。
B:
何故、上の方じゃないといけないの。
C:
上の方ほど勢いがあるから。次の成長を促進させることができるため。
B:
そうかなあ。下の部位でも同じだと言う人がいたよ。
C:
例えば、シュートの伸びたものをヒゲ芽の手前で摘んだときと、もう7〜10%になってしまっている ところから折るのとは、随分違うよね。前者だと順調だが、後者だとショックが来て、成長も止まってしまうことがある。これと同じだと考えて、なるだ け上の方をピンチするべきだと思っている。
E:
すると、ピンチの時期は遅れ遅れでしていると、もう6段、7段というところでは、身長をはるかに超えてしまう。
A:
自分の身長のどのあたりで整枝剪定するかは、枝が決めるのでなくて、自分が決めること。だから伸ばし放題、つなぎ放題というのは整枝のときに困ることになる。
B:
私は、原則的には伸ばし放題でよいと思っている。そして、時期が来ると適当なところでバッサリとやる。
C:
そりゃあ、ダメですよ。3mも伸びた枝を1.5m のところで切ると半分以上の葉をもって行かれることになる。これでは、木自身もショックが来てしまっていいわけがない。1週間ほどすると間違いなく下葉が落ちていく筈。
B:
そんな経験はない。ボケて来ているせいか、記憶もない。というより、去年も一昨年も、木に勢いがあっ たので、整枝剪定するステムに遊ばせ枝に花を咲かせるような具合で、8月下旬〜9月初旬にかけて花を咲かせている。そしてそれを切花して配ったりし て。それから、その下あたりを剪定した。
C:
そんなことしたら、花は小さいし、木は痛むし、いいわけがないですよ。
B:
去年はそれにダニが蔓延したので、散々だったが、花自身に問題を感じた訳ではない。秋の場合は剪定するところから、葉が20枚から25枚もあれば十分じゃないかと思っている。剪定するところの枝の太さが9㎜あると、先太りは9㎜程度、先細りの品種は7.5~8㎜程度の花になるようだ。だから、言えるのは、先細り品種で8㎜ぐらいのところで剪定するともうコンテストには使えないと思う。
D:
やはり、ショックは起きていると思うよ。そうでなければ、剪定の時期にハンディキャップは生じない筈だから。
A:
自分の剪定したい位置があると、その枝自身遊ばせるのか、その次の枝を遊ばすのか、次の次を遊ばすのか。福岡では、一般にその次の枝を遊ばせているが。
D:
熊本のFさんは、その枝で遊ばせても下の葉が動かないと言っている。私は両方比べているが、動くようだ。品種もあるようだが、動くようだ。だから次の枝を遊ばせる方がよさそうだ。 (研究会席上ではD氏はこのように発言したが後日研究の結果では、上から2.3芽かき取りを続けても、下まで動かなかったということである)
E:
遊ばすというのは、花を咲かせるのではなく、蕾のところで摘み取ることだと思うがどうか。
C:
それは、開花させては、弱ることは自明。しかし、ステムに凄く勢いのあるのもあって、そいつは勢い を弱めねばどうしてもならん気がするのもあるから、これもいちがいには言えぬ。
E:
現に摘蕾しそこなって開花したものも、その下で剪定しても、却って良い花になっている。
B:
ステムにあまり元気のあるのは、良い花にはならないようだ。だから、杓子定規で全部が全部摘蕾するのはどうか。
A:
剪定位置から数えてどの枝で遊ばすかは、品種によるが、香久山のように動きやすい品種は、必ず動くから次で遊ばすこと。剪定位置を決めるのは、ショックを最も小さくして、良い芽の出そうなところということになるが、一般には、やはり、剪定の位置を もう一段つなぎ、そこの先端を蕾の前で遊ばすやり方がよいことにしておこう。
C:
つなぐ意味はもう一つ、剪定枝の芽を充実させることもある。
D:
いやそれはどうか。よく7月の上中旬のシュートは、土用シュートと言って2、3回ピンチして咲かせるのが一番良い花になると言われている。 だから、ステムは充実していなくとも良い花は咲く筈だ。
B:
はさみでカチッと音がするほど固いステムでないと春の花は良く咲かないといわれるが、あれも疑問。 春の花は剪定を2〜3月にしたものは必ずその地方の気候に合って福岡は5月17日、18日あたりに咲くが、あれを約2週間遅らせて新芽を1回ピンチして 6月初旬に咲かせると、これまた良い花になる。やや暑さの影響が出て、弁が成長しきれないきらいがあるにせよ、春の花よりも良い花が咲くようだ。
D:
だから、春も固いステムでないと良花にならないというのはおかしい。これは、私も同意見。また最近は、予備剪定で通常の本剪定の位置の1節前で整枝剪定し、出て来た新梢をソフトピンチで芽を出させ、 これをそのまま花枝にするやり方も出て来ており、 秋はこれが可能なので、却ってこの方が良花を作る方法の主流を占めるようになるのではないかと思っている。
A:
ばら栽培もそれこそいろいろのやり方があって、結局、毎年毎年ああだこうだ夫々工夫をこらしてやっている。これがまた面白いところではある。