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ローズ・ふくおか アーカイブス 1985 春のお庭拝見の事

春のお庭拝見の事   村井 宇佐
昭和60年/1985 掲載

まえがき

 出しなに、「バラ見学なんて人に言ったらダメよ」と言ったら子供日ク「子供を放たらかして遊びに行くとカッコ悪いからでしょ」と子供の方が見抜いている。恐れ入りました。でも少しは母親の名誉にかけてと、昨晩から今日一日の仕事を消化し、留守中のお弁当を作り、子供にウィンクして出かけました。スタートがこんなですから、もう目的地に着く頃にはダウンして眠けがくるのではと案じておりましたが、さすがに自分の好きな事、目は爛々と輝き興奮で胸が熱くなりました。

 お庭拝見の感想という事ですが、私の如き新米ではベテランの方の批評など、とても出来ません。とにかく尊敬の念をこめて、すばらしいと感じた事を列記したいと思います。

 幸い主人がポラロイドで各々一枚づつ、お庭を撮ってくれましたので、見いおこしながら、

  1. 桑原先生――親子二世代のほのぼの空間を感じました。 バラ庭のあの日だまりのスペースはバラ栽培上、好条件だなーと思いました。

  2. 牛島さん――狭いところながら実に端正に栽培されており、きめ細かな管理をしていらっしゃる様な気がしま した。窓際のスタンダードが強く印象に残っています。

  3. 太田先生――さすがに押しも押されもせぬキャリアの持主、ただただ感嘆させられました。そのスケールといい樹令の重みといい、バラ庭ならずバラ園です。私共初心者は、どうしても新しいものへのあこがれが強いのですが、古き良き花といった郷愁に似たものが感じられるのではないでしょうか、育種に非常に興味を感じます。

  4. 河辺さん――本当にお花が好きとみえて、いろいろと植えていらっしゃいました。いつの日にかバラで埋め尽くされるのではないでしょうか。

  5. 植物園――庭バラとして私には最高の様に思えました。 願わくば私もずんぐりむっくりの株に育てたい。

  6. 瓜生先生――シュートの力強さ、堂々たる株立ちに圧倒されました。無造作にお作りになっているようで実はポイントだけはしっかり押さえてあるように思います。 かたわらの家庭菜園にも先生の有機農法への夢が詫されているようで、いろいろ反省させられました。

  7. 小林さん――ステムの長さにただただ驚くばかり、どうしてあんなにスマートになるのかしら、高度の裁培テクニックを感じます。

  8. 内藤さん――控えめなお人柄がよく出ていると思います。ヒヨコ草にはホッとさせられるものがありました。どこのお庭を拝見しても草一本はえておらず、手入れの程を感じるのですが、ここに至って始めて、私の安心した事の一つでもあります。

  9. 大神先生――スタンダート仕立てに魅了されました。 創意工夫の持ち主、お医者様との事ですが、バラ診断も始められたらと思います。ぜひぜひ患者になって診察して頂きたいと思います。

 そして最後に私の一番の良きアドバイザー山田さんをお送りして我家の庭を眺めました。何んとなく貧弱で幼い、賑やかなバラ花壇をみて来ただけに何んとなく詫びしい。少しは満開になる迄放っておいたらと思うのに五分咲きの頃、切りまくるのでいつも淋しい、アー一対何んの為にとは思うけど、人にさしあげて喜んで頂けたら大満足。

 バラ作りについては二十年、三十年先の老後の事を思います。太田先生がおっしゃってた。これは二十年前のもの三十年前のものと私も言えるようになるかしら、今からうんと下地を作っておいて、できるだけ多くの人に切ってあげたいと思います。

 皆さんに共通して言える事ですが、研究会でのお話しは本当に基本的な事、各々裁培条件も環境も違いますし、手入れの頻度も異なる為に当然自分なりの方法を会得なさっている様に思います。私も先輩諸氏の貴重な助言を仰ぎながら、手抜きをしても(現在の私はバラにそれ程の時間が裂けませんので)ポイント栽培だけは心がけたいと思っています。

 因みに、今日は私たちの十四年目の結婚記念日、何んとすばらしい一日だった事か、一番好きな事させて頂いて、皆さん本当にありがとうございました。

秋のバラ展のこと

 疲れました。とても疲れました。主人や子供や仕事や他の花々を随分犠牲にしました。昨年迄はバラ展開催中、一日だけ暇をもらって出かけていたのですが、今年は、どっぷりと漬かってしまいました。それだけに学ぶ事も多く毎日帰ってからは、その日に助言して頂いた事をメ モしました。不思議と自分の評価と随分違う事に驚きました。それだけまた私に観る目がないという事でしょうか、花の生け方からドレッシング、色の組み方に至る迄皆さんのアドバイス本当にありがとうございました。のんびり咲かせてのんびり楽しんでが性に合っているのに、なんだか思わぬ方向に走り出しました。確かにバラ展は刺激にはなります。そしてベテランの方に評価して頂くのが何よりの勉強だと思います。本当に厚かましくて勇気のいる事ですが、あえてそう致しました。

 小五の娘に「審査員の人ってどんな人?」と尋ねられたので「お年を召した方よ」と答えると娘日「じゃ地味なのを持っていけばいい、お年寄りは派手なものは嫌いと思うよ」ですって。ホントにふきだしてしまいました。子供らしい発想です。でも残念ながら皆さん、とてもお若い。きっと華やかなバラをみて過していらっしゃるからだろうと思います。バラはやはり情熱をもたらすのでしょうか。

 それから、バラの深みに、はまればはまる程、私はお世話なさる方のご苦労を思います。今迄盛況だったバラ展の桧舞台の陰に、何んのお役にも立てない事、お詫びしつつ会場を後にしました。