パネルディスカッション ベーサルシュートの発生を促す方法
平成22年/2010 No.21 掲載
- コーディネイター:山本以和彦
- パネラー:小林 彰 東 明美 本多昭治 阿部澄人 中川尚彦
山本:
本日のテーマは、「ベーサルシュートの発生を促す方法」として何か有効な方法があるかと言うことです。
研究会資料P14に記載されている「シュートを出させる方法」として
- 根ぎわ(接ぎ口)によく陽が当たるように工夫する。
- 接ぎ口が必ず地上に出るようにする。
- 不要な枝は根元から切る。
これらはバラ作りの上での留意点と思われるが、これ以外に実際に有効な方法があるのかどうか、何か秘策又は工夫されていることがあれば、発表してほしい。
本多:
昨年の講義の際、シュートを出させるにはどうすれば良いかとの質問があり、株を45度位に倒すとシュートが出ると言った。鉢であれば、45度位に埋めておく。余り実験してないが、多分日本バラ会あたりからの情報と思われるが、株を倒しておけば、シュートは出易くなると思う。
また、苗を植える時は深植えしないようにすることは勿論のこと、株は沈むので沈んだ株は、年に1回12月頃に地上げをすることにしている。毎年5本位は行っている。
2004年の「ローズ福岡」14号に「474本のシュート」と言う題で書いている。当時121本を植えて474本のシュートが出た。1本当たり3.9本が出た。そのうちベーサルシュート1.1本、途中シュート2.1本、高芽シュート0.7本で、ベーサル及び高芽シュート1本に対し、途中シュートが2本出ていた。多く出ているのはロイヤルハイネスが13本、ファーストプライスが12本出た。講義を真面目に聞いてやればこの位は出る。
東:
植えて30年以上になるので、シュートがぼんぼん出なくなった。深植えしないように、出来るだけ根元に陽が当たるように努力している。
バラ展が終わった先週の雨前にお礼肥をして、それがシュートに繋がるような気がする。肥料は有機肥料ばかりを使っている。お礼肥も有機肥料でしている。
昨年、マダムビオレに何本も良いシュートが出たが、その時は化成肥料を少しパラパラとやっただけで効き目があったようです。しかし、ほとんど有機でやっている。
昨年の有機肥料はアニマルをやった。今年はエキスパートを根元にやり、中耕している。根元が茂っている所は、陽が当たるように、また深植えのところは根を出してやるとシュートが良く出るようです。
小林 :
毎年やっていることを話す。現在雨を避けるためビニールを張っている。よって、昨日・一昨日に水をやったが、20本のバラに対し、井戸水全開で30分間やった。1本当たりでは20~30リットル位やっている。
今から行うことは、今日尿素の1000倍液を1本当たり大きな木で30ℓ、小さな小さな木で10ℓやる。6月にもう1回やることにしており、これがお礼肥です。
なぜ窒素なのか、土壌検査の結果、リン酸・カリ・カルシュウム・マグネシュームが異常なほど多かったので、今咲いているバラも昨年の元肥に尿素と堆肥しかやっていない。油粕もやっていない。
今残っている咲きガラの花首をとって、出てきた芽を全て潰している。それを行ううちにシュートが良く出る。咲きがらに5枚葉を1,2枚付けて切るより雲泥の差がある。出ない場合は、株もとを倒すと刺激があってシュートが出る。
40年以上の株が10本以上あるが、下からシュートが出ないので、秋は上の方での開花を見ている。
窒素肥料を多量に施肥して、咲きガラを花首からとって出てきた芽を潰し、シュートの発生を待つこととする。この二つが主な内容です。
阿部 :
植え床は蒲鉾型の畝建て式が理想と思っている。通路のために両方にレンガを立てているが、蒲鉾型であると雨が降ってもすぐ溝に排水する。この方式が一番完璧と思っている。その中央に、追肥がゆっくり出来る位の高段に植えて、根の下に60cm位の杭を入れた上に植えていれば絶対下がることがない。杭の上に台木を高めに植えることが、シュート発生、根にも一番良いと思う。
肥料は6:6:6又は8:8:6位の完全有機質の肥料を使用して、一般に春1本当たり300g使用しているのを250gにして、あとは乾いた時に月1回位液肥で補っていくので樹勢の維持にも良い。既に1段目の芽のピンチが終わり、2段目の芽も出始めている。昨年葉面散布でHB101を使用した関係か、今年は良く芽がでている。
花首から落とすことを実行しているが、2番花を咲かせないで(2番花を咲かす場合は5枚葉を付けて切れば良いが)後はシュートを出すのを応援する役目として終わらせる。新しいシュートが3~4本出れば良い。それが出ない場合は、花ガラをとった枝の先を剪定し紐などで曲げると芽がよく出る。
曲げた枝に数本の芽が出た場合は、良い芽を1本残して後は欠くこととする。7月上旬頃曲げた枝に出る芽を3段ピンチするのが良い。新しいシュートで花を咲かせたのが良いものが出来るので、リズムをつくってやる必要がある。
シュートが4~5本以上出た場合、全部を残すと上手く育たずに良い花も咲かないので、ある程度春の芽欠きのように減らすことが必要となる。主枝は多くても5~6本で良く、多く残し過ぎると秋に藪となるので、それ以上は切ったが良い。
今シュートが出ないのは「あけぼの」です。
中川 :
結論的に言えば、①根際に良く陽が当たるようにする、②接ぎ口が必ず地上に出るようにする、③不要な枝は根元から切る、更にシュートを出したい時には、根元のところから不要な枝を1本切るとシュートが出る。
芽が出るためには、ベンジルアデニンと言う物質が出ると、これが発芽ホルモンとして芽が出る。根が切られた時多発すると思う。切るタイミングが合えば良く出る。
最近は必ずしもベーサルシュートでなくとも良いと聞く。20~30年経った樹は、思い切って土を綺麗にして植え換えると、よく分からないが当たった時はシュートが良く出る。1本の樹から5本花が咲く位のシュートが出た。丁寧に耕して深く掘って植え換えた方がシュートも良く出る。樹によって深く掘った方が育つものと、ほどほどのものがある。
40年ほど前に、大学の先生がどうしたらシュートが出るか論文を出しているが、その時、発芽ホルモンがベンジルアデニンと言うことで皆が塗ったところ、ドロッとした液体なので水に溶けなくて塗りにくく、ホルモンであるため濃度が問題であった。その当時、1gが10,000円もしたので、ワセリンに溶かして塗ったらシュートがでたと言う論文がある。そのホルモンを入手して塗ったが効果は分からなかった。塗るタイミングがあるかもしれない。今は業者も誰も使用してなく、まだあるかもわからない。
バラがシュートを出したい時に、肥料などをやることが上手くいくことと思う。
山本 :
共通項としては、資料に書いてあるとおりで、肥料は有機も化成もあり、また有機液肥1000倍を1本当たり20ℓ位掛ける方法もある。
今回発表された方は特別上手な人ばかりだから、シュートを出すことをすらすら言われたが、現実にはそう上手くいかなく、普通の人には簡単にいかない。樹が若い時や土が新しい時は上手くいくが、古くなるとになかなか出なくなって面白くなくなる。
皆さんに聞きますが、シュートを出す万能薬があると思いますか。また方法がありますか。
本多 :
昨年頃から硫酸マグネシュウムをお礼肥としてやっているが、実際お礼肥+シュート発生のためとして、1本当たり30~50gを5月下旬と6月下旬にやっている。
土壌検査で、マグネシュウムがカリに比べてやや少ない、しかし、多いカリに比べてやや少ないだけで、マグネシュウムでバランスの調整は出来ないと書かれていた。
カルシュウムとカリに比べてマグネシュウムが少ないと書いてあるが、バランス上増やさなくてはならないと言うことではないが、別の資料で発根に良いと書いてあったので、昨年の春に元肥に入れたところシュートの出が良かった。それでまだ経験は少ないが、お礼肥や元肥に硫酸マグネシュウムをやった方が良いのではないかと思われる。量は10g~でも良いと言う意見もある。
秋のバラでは6月上旬頃までにシュートの出が止まってしまうが、ベテランの方は7月に出るシュートが良いと言われているが、お礼肥をやる時期によって、7月にシュートを出すような仕方もあり得るか。
山本 :
昔、近藤さんと言うコンフィダンスの名人がいたが、7月になると施肥して、樹を倒して丁度芽が出てきたものを使うと言っている。土用シュートをだすのに倒して出すか。
土用シュートをタイミング良く出す有効な方法があるのか。土用シュートがたまたま出たのが良い花が咲くのか。計画的に出せる方法があれば一番いいが。
その他の主な意見
- 曲げる方法しかない。ベーサルシュートを計画的に出す方法はない。
- 土用シュートよりも、既存の枝を切り戻してシュートを出すのも良い。
- バラ展の開催日から逆算して・・・・・・・切るとよい。
- 途中シュートを全て欠いで、ベイサルシュートの出を待つ。
- 硫酸マグネシュウムの使用は流行している。ネットの有料サイトに効用が載っている。硫酸マグネシュウム等について、土壌検査にもいろいろ記載されているが、バランスが必要と思われる。
- 新しいシュートばかりでなく、古い枝と新しいシュートが混在してないと良い花は咲かない。
- 蒲鉾型の植え床は根の張りも良い。
- 土と環境が良いことが必要。土には堆肥の他にも家庭ごみやバラの剪定枝を枯らし発酵させたもの(堆肥)を入れるのも良い。
- 施肥は、緩効性のもの、速効性のもの等コントロールして行う。
まとめ
深植えしないで、株元に陽が当たるように留意して性質の良いバラを作り、良い環境の下で施肥コントロールを上手くやり、シュートが出るように努める。