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ローズ・ふくおか アーカイブス 2006-17 世界バラ会議・ローズコンテストに参加して

世界バラ会議・ローズコンテストに参加して   木附 久雄
平成18年/2006 No.17 掲載

 初のアジア誘致となった第14回 [世界バラ会議大阪大会 2006] は、5月11日から5月17日まで開催され、各種の式典、講演会、会議、展示会、ツアーのプログラムが組まれた。そのメインイベントであるローズショーは、[ばらフェスタ大阪] と銘打ち、 花博記念公園鶴見緑地内で開催された。会場は7つのゾーンに分けられ、暮らしの中のバラ、ばらの和風庭園、ばらの生け花、青いバラの展示、ローズガーデンなどが一般公開された。3日間で66,616人の入場者が訪れたと聞いている。このローズショーの一環としてローズコンテストが行われた。改めて資料を見ると、世界バラ会議期間中、開催国の生産者、個人の栽培技術を競う目的でローズコンテストは必ず行われることになっているようである。インターネットで検索してみると、なるほど世界の名立たるバラコンテストの一覧の中に入っていた。今回は5月12日から14日の3日間をローズコンテストとして一般公開し、出品者の展示準備は11日(木曜)と、13 日(土曜)に行われた。

 このコンテストへの参加は H16年頃から、盛んに日本ばら会雑誌等で呼びかけがあっていたと記憶している。今コンテストには、目を見張るような秀花が集結するものと想像し、興味と冒険心もあり1年前から参加を予定していた。

 H18,5月初旬は天候不順が続き、未だ肌寒く、開催日には関東・関西はもとより山口あたりまでは、開花が間に合わないとの事前情報だった。九州もまた厳しい状況で、先んじて5月5〜7日に開かれた第109回・春の福岡バラ展は、多くの会員の皆様の開花が間に合わず、少ない出品数で終わっている。私の住む筑後市は、例年、福岡市内よりも平均1〜2日は開花が早く、幸いメルヘン、コロラマ、ロージクリスタル、あけぼの、白川、熱情、ジェミニと数種類の FL と ER を会場に持ち込むことができた。11日は日帰りとし、13 日再度大阪に向かった。交通手段は新幹線とタクシーを用いた。

 コンテスト会場は、106.3ha にも及ぶ広大な花博記念公園鶴緑地内にある2つの施設で行われた。11日は “水の館ホール” で開催された。このホールはドーム状で床・壁ともコンクリートで、小さなモーターショーなら開催できるくらいの広さがあり、天井からの自然採光のみでも充分明るかった。11日は生産者部門の展示も行われ、サイズのそろったバラ10〜30本を入れた円筒形の容器が、100個近くは展示されていた。同時に多くの商業品種を見る機会は滅多にないので興味をそそられた。定番のローテローゼに加えて淡いピンクと覆輪の品種が目立った。13 日は約 5000 枚のガラスを使 ってデザインされた“咲くやこの花館”で開催された。

 今回のコンテストには、合計 36 種目もの多種の競技が行われ、日頃見ることのない競技も組まれており、今後の参考になった。その内容を列記すると、定番のカテゴリーとしては、HTでは1本花、2本同種組花、2本組花、3本組花、5本組花、盛花、日本作出1本花、FLでは3本同種組花、3本組花、Minでは鉢植え、盛花があった。これに順ずるカテゴリーとしては、FL1本花、FL5本組花、芳香花1本花、ローズオオ サカ1本花、ローズオオサカ鉢植え、HT浮花3輪、Old Rose3本内があった。一方、馴染みのないカテゴリーには、HT (3 部咲/見頃/満開 3段階)の同一品種と混合、花首 HT5輪、花首 Min9輪、かご盛(FLとグリーンのみ)、ばらアレンジ(ミニ以外)、コンパニオンプランツ(バラと草花)、ボタンホールローズ(ブートニア)、コサージュの競技があった。2日間を通しての出品数は合計 687 作品で、各部門3等までが入賞と なった。

 前情報通り、やはり関東・関西からの参加は少なく、また HTの出品数がやや少ない印象であった。因みに、通常のコンテストで一番出品数の多い HT1本花競技で 11 日 (31 花)、13 日 (34 花)で、FL は 15-20 花程度の出品数であった。予測通り九州勢が地の利を得て入賞者が多く、とりわけ福島康宏さん、西村英子さんの活躍は目覚しかった。2人でメルヘン、ロージクリスタル、手児奈、あけぼの、みわく、ジェミニ、 その他 FL、OR、Min を持ち込まれたと思うが、ほとんどの種目で入賞、内6種目で1等、さらに HT盛り花で日本ばら会名誉総裁賞を受賞された。関東からは千葉の石橋五夫さんが、孤軍奮闘され、6部門で1等に入選され、世界バラ会連合会長賞に輝き、貫禄を示された。福岡バラ会では小林先生が11日のみの参加ながら5種目で入賞され、 内4種目は major の HT種目であった。阿部さんは、開花が間に合わず、片手で運べる程の僅かな持ち込みの花から、アンティークローズ3本で1等、FL3本同一組花で2等を受賞された。私も、20 種目にエントリーし、いくつか入賞する事ができた。下手な鉄砲も、数撃てば…の類であろうが、正直嬉しかった(苦笑)。

 今コンテストの審査には、大会規定により海外審査員が半数加わっている。11日は 海外 16名、国内 18 名、計34名。13日は海外 20名、国内 12名、計32名の構成で審査が行われた。入賞花を見て回ると、私自身のイメージと大方一致しており、世界中評価は同じだと感じ、感慨深かった。漏れ聞いた海外審査員の声を 2〜3書き留めておく。HT競技においては、芯は弛まず同心円をなし、花は左右対称である事が評価の基本とのことで、この点での内外の評価法は同じようである。FL競技、特に1本花の場合、中心部の摘蕾が遅く、茎が残っているのは、極めて見苦しいとの発言があった様である。FLの摘蕾や、さらに HTの脇芽の処理の際、今後留意したいと思う。HT(3分咲/見頃/満開3段階)競技は海外でも行われているようで、さらに蕾を加えた4段階と言う種目もあるとのことである。これらの競技において、”見頃”は文字通り見頃の7〜8分咲きで、”満開”とは芯が弛んで花弁が完全に開いたものと定義するとの事である。美的感覚からすると、3分咲、7〜8分咲、芯の緩まない9〜10分咲きとしたいところであるが、この様に展示したものは確かに入選していなかった。これらは今後の参考にしたい。

 今大会を通しての HT 競技のレベルは日本ばら会・全国大会や国際バラとガーデニン グショウと比較して若干劣っているとの印象を持ったが、詳しい分析・評価は、私の浅い経験では荷が重過ぎるので差し控え、先輩方に御評価をお願いしたい。その他の2〜3の種目について雑感を述べる。HT 花首5輪競技、HT 浮花3輪競技は始めて経験する種目であった。HT 花首5輪競技は、5個の朱塗りの1合枡をボックスに利用して、 花首のみを入れて展示するもので、HT 浮花3輪競技は透明のガラスの水盤に、葉も含めて3花を浮かべて展示するものである。これらは、夫々の花が如何に端整で、かつ大きさが揃っているかが評価の基本のようである。実際に出品してみると、浮花で花がフラツキ、芯の方向が定まらないのには閉口した。Min 花首9輪競技は、細いオアシスに横並び1列に9個、Min の花首のみを挿して並べ展示するのだが、これは可哀想で不気味な感じがした。バラの葉かハーブの葉程度までなら添えても良いこととした方がずっとシャレでいると思えた。いずれの花首競技においても、花型の整い、花の均等さ、色彩のバランスが重要で、入賞作品をみると、明らかにこれらの点で優れていた。コンパニオンプランツ、ばらアレンジ、かご盛の種目は、その違いも解からなかったが、これらのアレンジ部門や HT 盛花は、会場を豪華で華やかな雰囲気にし、入場者の人気も高く、大きな大会には不可欠なものに思えた。会場に茨城の小林幸子さんがおられ、アレンジやFLの生け方に関して丁寧に御指導頂いた。

 2回にわたるコンテスト参加は、準備が大変で、両前日ともほとんど徹夜の状況であった。しかし、日頃見る機会のない色々の種目を経験でき、また今後、バラの育て方を工夫していく上で、参考となる貴重な情報が得られ、大変有意義であった。

 世界バラ会議・ローズコンテストの概要をレポートいたしました。何分、浅い経験と低い見識の為、お粗末な報告となった事をお詫びいたします。今大会での経験を糧とし、さらに研鑽に勤めたいと思いますので、今後とも、宜しく御指導お願いいたします。最後に、前準備から大会会期中の運営に忙しく働いて頂きました田中丸 善彦会長に、心より御礼を述べ、報告を終わります。