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ローズ・ふくおか アーカイブス 1991 私のバラ栽培

私のバラ栽培   荒木 繁
平成3年/1991 No.6 掲載

まえがき

 今迄バラを栽培していて、どうしても良い花が咲いてくれない。一体何が原因なのだろうか、或いはまた何が不足しているのだろうか? と、お考えになったことはありませんか。こう考えるのは私だけではないと思います。それを良く確かめなければ、何時まで経っても解決は出来ないと思うのです。バラ栽培は何年経験を重ねても奥が深くて、これで良いと言うところまではなかなか届きません。バラとの出会いから、今日まで多くの失敗を重ね躓き反省をしながら作って来ましたが、この拙い私の経験をもとにバラ栽培の着眼点を思い付くままに 綴ってみました。

1 バラ栽培の基本

 バラは生き物であるから、決して1プラス1は2と言うような理屈通りにはゆかない。いくら色々の栽培書を読んでみても、多分こういう事が原因なのではなかろうかと言う位にしかその理由はわからない。そこで、バラを栽培するに当たっての基本的に着眼点として、次の10項目を挙げてみた。

  1. 品種の選定・・・作る目的に合った種類のバラを選ぶ
  2. 苗の選別・・・健全な苗を一番良い時期に正しく植える
  3. 土作り・・・団粒構造にして、排水性、通気性の良い栽培土に作る
  4. 栽培環境・・・強い日照や強い風当たりを防いでやる
  5. 潅水・・・バラは水を好む。かける時はたっぷりと
  6. 施肥管理・・・元肥重点主義で、堆肥等の有機質肥料を多くやる
  7. 病虫害の防除・・・良く見回って早期発見に努め、適薬を適量で
  8. 整枝、剪定・・・必要な枝に木の勢力を集中させる
  9. 摘蕾、摘心・・・適時、確実に実行する
  10. マルチング・・・冬眠期を除いて適材で実施する

2 バラ栽培の環境

 どういう処で育てたら良いかと言うことであるが、 バラは広く世界の色々な環境の処で栽培されており、相当広い適応性を持っている様である。最も良い花を咲かせようと思うのなら、矢張バラの為に最も良い環境を作ってやらなければならない。悪い環境の下では、どんなに苦労をして手をかけてやっても良い花を咲かせることは大変難しい事である。然し、そうかと言って悪い環境の下では絶対に良い花を咲かせることは出来ないかと言うと必ずしもそうではない。

 「家の庭は、そんな素晴らしい環境なんかではないので、良い花が咲かないのも無理はない」等と仰有る方がおられるかもしれないが、そんなに簡単に決め込んでしまう必要も無いのである。貴方のお庭が、たとえバラ栽培にはあまり適しない環境であったとしても、“こうすれば改善され、従来よりはずっと良い花が咲くのでは” と言う方法がきっとあるに違い無いのである。それが見つかった時は、もうコンテスト入賞も決して夢で無いであろう。

3 良い土作り

(1) バラに適した土とは

 大地は、あらゆる生物の母であると言われている が、水や養分を保持して分解し、バラが吸収し易いように液体化してくれるのが土地である。だから、土地がバラ栽培に都合良く出来ているかどうかが、そっくりその儘良いバラが作れるかどうかと言うことになる、と言っても決して過言ではないのである。良いバラを咲かせたいと思うのであれば、矢張その儘の土地に植えるのでは なく、手をかけてバラが育ち易い土地を作ってやることである。それには、先ず貴方のお庭がどんな土地であるのかを知ることであろう。今私達が作っているバラの台木になっている野バラの大部分は、湿地とか川辺に沢山自生しているものである。

 その殆どが、水流から5.6cm~1mの高さの土手に群生しているのが普通で、つまり野バラはそういう処が好きなのである。このことは、他のバラについても言えるのである。

バラの用土は、通気性と排水性を主眼として準備すべきである。では、どういう土が排水、通気性に富んでいるかと言うと、注いだ水がサッと引く土と言うことになる。水が何故サッと引かなければならないかと言うと、 よく西洋で言われているように

“バラは水が好きであるが、足が水に浸っいることは好まない”

 つまり、根が終始水に浸っているのは嫌うのである。こ れは路地作りだけの問題ではなく、特に鉢作りの場合に もあてはまることである。

 そこで、排水の悪い処では、畝を高く盛り上げてやっ たり、通路に傾斜をつけ雨等が溜らないようにする。また反対に乾燥し易い土地においては

  1. バラの花壇を 5 cm~10cm位他の処より低くする
  2. 傾斜土地なら、段々畑にして水保ちを良くする
  3. 堆肥等を多く施して土壌をスポンジ状態(団粒構造)にし、水保ちを良くする
  4. 特に多量の水を潅水して、乾燥しないように注意する
  5. マルチングを施したり、簾や塀を立てて午後の日照りを遮り、温度の上昇による乾燥を防ぐ

土壌改良の仕方

乾燥し易い土地

排水が良すぎ、乾燥し易い土地では、堆肥などを多く施す

湿気の多い土地

花壇全体を盛り上げる 粗大有機物を多く入れる

赤土などの固りが多いほど良い

土壌構造 と 性質
土壌 主な性質と改良方法
砂地 排水は良いが、保肥力に劣る。堆肥を多く入れることが望ましい。
火山灰土 単粒となり易く、軽く排水も悪くなり易い。堆肥を多く入れることが望ましい。
重粘土 保水力に富む。粗大有機物を加え、排水を良くする。
山砂 排水は良いが、保水力に劣る。肥料分が劣るので、堆肥を多用する。
川砂 排水が良すぎ、保肥力がない。肥料分が少いので、堆肥と共に保肥力の有る土を客土する。
赤土 堆肥を多用する。肥料分が少ないので、多肥栽培を行い燐酸分の施肥を多くする。
真砂土 単粒となりやすく、排水が悪い。堆肥等を多く施してやる。

いずれにしても、バラにとって水は大切な養分であ り、乾燥を嫌う植物であることを忘れてはならない。

(2) 保肥力のある団粒土

 用土は、排水性と同時に保肥力つまり施した肥料を流失させないで用土中に保持し、時間の経過とともに次第に吸収させる性格を持っていることが大切である。排水性と保肥力とは一見矛盾するようであるが、この二つの性格は用土をいわゆる団粒性にすることによって作り出すことが出来るのである。

 土の構造を単粒性と団粒性に大別すると、単粒性とは 土が細かい粒子のまま集まっているもので、排水性、保肥力ともに劣る。

 団粒性とは、単粒性の土がある程度の結合をしてダンゴ状になり、それが集まって土壌を形成している状態を言う。この場合は、団粒と団粒との間には間隙が出来るので、通気性、排水性は勿論のこと保水力、保肥力が生じ、バラの培養士として最適の状態となる。 用土を団粒化する為には、堆肥類、土壌改良剤を多量に施し、適時バラの株間を中耕することである。

4 施肥管理

 一本のバラは、水分が46%と乾物が54%から出来ている。 この乾物の中には、窒素 (N) 1.4% 燐酸 (P) 0.25% 加里 (K) 0.27% カルシウム(Ca) 1.4% マグネシウム(Mg) 0.8% が含まれているそうである。これを見ると、バラに大切な養分が何であるかと言うことを知ることが出来るのである。

(1) 肥料の三要素

植物にとって最も大切な三要素とは、N、P、K を言う。

  • N は、バラの栄養成長に大きな関係を持っており、新しい芽を伸ばし、華や茎を成長させるのに大切な養分であ る。バラは根から N を吸収すると共に、同化作用によって炭水化物から蛋白質等の N 有機物を作り、細胞を分裂させて成長していくのである。 N が多すぎると、細胞は伸長するが膜質を作る糖分が減る為に細胞壁は薄くなり、茎が間伸びしたり、葉が大きく軟弱になって、病気に対する抵抗力を失うこととなる。従って他の P や K との比率を考えて与えなければならない。 N は流失や分解、揮発が早いので、追肥を主体にすべきであろう。特に他の肥料分と違ってバラの成育に色々の影響をもたらすので、施肥の時期をうまく調節し、花が目的の成木には控えめにやるべきである。

  • P は、N に比較すると流失しにくく安定しているが、 土に混ざると吸着されて植物が吸収しにくい形に成ってしまう。P は根や葉に多く含まれていて木を充実させ、 病気に対する抵抗力を強めて立派な大きい花を咲かせてくれる。若苗を育てるには N の割合を多くし、2年目からは控えめにして P や K の割合を多くしてやる。Pは流失しにくいので、元肥として根の全面に行き渡るように与え、無駄の無いように自分の畑の土壌条件とにらみ合わせて施肥しなければならない。

  • K は、木を充実させて耐寒性を増し、凍害を減じ、病虫害に対する抵抗力を与えてくれる。K は P と同様に、 土壌に入ってからあまり移動しないので、全面に施肥する必要が有る。日照の不足する秋の終わり頃には、特に必要である。そして年に4回位に分けて与えるのが理想とされている。
三要素の役割
三要素 過多障害 不足障害
窒素 ①
(硝石、尿素、油粕等)
新梢や葉の成育を促進する
徒長成分と成り、耐病性に劣る 伸長悪く成育不良となる
燐酸 ③
(過燐酸石灰、溶成燐肥等)
花色を良くし、花を大きくする
起きにくい障害であるが、落葉し易い 花小さく花色悪い。 花つき低下する
加里 ①
(塩化加里、硫酸加里等)
耐病性、耐寒性等高める
窒素不足障害に似る 樹力劣り、耐病性、耐寒性悪くなる
バラの栽培に使用される肥料
肥 料 名 N% P% K% 効果・備考
有機質肥料 油 粕 5.2 2.5 1.8 遅効性
配合肥料として、植え付け時の元肥、或いは
夏期バラの廻りに埋め込んだり、寒肥として使用する
魚 粕 9.0 5.0 -
骨 粉 4.0 21.0 -
鶏 糞 3.0 2.5 1.2
米 糠 1.8 3.6 1.4
草 木 灰 - 2.5 8.0 速効性
雨に濡れると流失するの で早めに使用。
硫酸加里と同時に使用してはいけない
無機質肥料 過燐酸石灰 - 20.0 - 速効性
元肥として配合肥料に加えたり、
水に溶かして追肥に使用する
溶成燐肥 - 19.0 - 速効性
苗木の植え付け時に、根に直接触れる様に
上土に混ぜて使用する
硫酸加里 - - 45.0 速効性
追肥用、バラの成育中に 水溶液として
配合肥料の加里分不足を補う
尿 素 46.6 - - 速効性
葉面散布用として使用する
無機配合肥料 ハイポネックス 6.0 6.0 19.0 速効性(微量要素を含む)
追肥用、バラ成育中に追肥液として
使用する
日 産
プラントフード
12.0 12.0 16.0 速効性
追肥用、鉢物、プランターには、やや基準液より
薄目にして使用

(2) 肥料の種類と成分

  1. 有機質肥料(遅効性)
    施肥してから効果が現れるまでに時間がかかるわり に、じっくりと長期に亘って効き目が有るので元肥として適するタイプである。化成肥料の様うな無機物より、 天然の有機質肥料、即ち堆肥とか乾燥牛糞、油粕、魚粕、 骨粉、米糠、鶏糞等の方が、三要素の外の色々な微量要素も含んでいて、バラには最適である。

  2. 無機質肥料(速効性)
    施肥すると、即水に溶けることによって、そのものが 肥料成分であり、直ぐに植物に吸収される。速効性のも のは速くから効果が発揮されるが、水によって流されて しまうのも速く、効果は短時間で終ってしまう。だから 株の成育期に栄養分を急に補うような追肥として使うの に適しており、適宜数回に分けて施肥する。速効性で持久性が短い為、取扱が楽で調節がし易いという利点は有るが、連用すると土壌に有害な塩や酸が多くなる欠点が有り、使い方を誤ると、濃厚過ぎる場合は根焼けを起こして成育が止まり、枯れたりすることが有る。

(3) 施肥の方法

  1. 苗作りと花作りの違い
    バラ作りと言っても、花が目的で大苗を植えて与える肥料と、春の接ぎ木新苗を植えてから一人前の木に育てる時の肥料とでは、量や成分だけでなく、やり方さえ違ってくる。木を育てる時は、N 分が少し位多くても構わないが、花の場合は、多いと良質の花は望めない。花が目的の施肥は、開花期に肥料分が無くなっている程度であれば花質が良く、蔓バラ等の花付きも多くなる。芽が伸び新しいベーサルシュートを出さなければならない時は、十分な肥料が必要であるから、この時は肥料切れをしない様に与えなければならない。本格的に花が咲くのは2年目から7年目位の木で、1年目迄は木を早く育ててやる為に、花が多少乱れても N の割合を増やしてやるべきである。木が一人前に育ってからは、多肥を避けて木の力で花を咲かせる様に施肥を控え目にして育てていく。

  2. 元肥と追肥
    元肥とは、バラが大きく育っていくのに必要な養分を予め十分に施しておく方法である。苗木を植える前に、 床土を掘って全面に鋤込んだり、休眠期に土質の改良を兼ねて徐々に効果が出てくる分解の遅い有機質肥料を鋤込んだりする。更に春の花が終わると夏に備えて木を早く回復させ、新しいベーサルシュートを伸ばさせるように与えるのも元肥である。特に蔓バラは、この頃に元肥をやるのが理想的である。
    追肥は、元肥の不足を補いバラの成育ぶりに合わせて速効性の肥料を与えていく方法で、元肥えをやっても量的に不足気味だったり、天候の関係で分解が遅れていたり、又流失が激しい時に補足の意味で与える。ごく薄く溶かした化学肥料や発酵し終わった有機質肥料の水肥等の形で、バラが直ぐに吸収できるように与えてやる。 追肥は、総てバラの成育中に与えられるので、ごく薄くて速効性であることが原則である。

  3. 施肥量
    堆肥、牛糞、ピートモス、バーク堆肥、籾殻、腐葉土 等出来るだけ多く施す。
    • 骨粉・・・・・・・300g
    • 溶燐・・・・・・・200g(冬元肥)
    • 魚粕又は油粕・・・200g
    • 米糠・・・・・・・100g
    • 硫酸加里・・・・ ・30g 又は草木灰・・・200g

5 潅水とマルチング

(1) 潅水

  1. 水の働き
    バラの凡そ半分は水であり、その必要な養分を総て水溶液として吸収し、体温の調節の為に蒸散作用を行う。 また日光の力をかりて、水は空気中の炭酸ガスを結び付け、同化作用を営んで養分を作ったり、水の力によって細胞内の物質を化合させたり分解したりする。バラが水を吸収するのは、根の表面に半透明の膜が有り、根の細胞と土壌中の水分とを隔てていて、普通は細胞液の濃度が土壌水分の濃度よりも濃いので、水は薄い方から濃い方へ膜を通して移ってゆき、同じ様に植物体内の細胞か ら細胞へと送られてゆく。これを滲透圧と言う。肥料の濃いものを与えた時に根焼けを起こして木が萎れるのは、細胞液よりも土壌水分に溶けた肥料の方が濃い場合は、滲透圧によって逆に水を根から奪われる為に起こる。
  2. 潅水の効果
    水はバラに水を補うだけでなく、バラが育っていくのに最も必要なエネルギー源である。亦ふっくらとした柔らかい健康な土壌に、新鮮な空気を送り込む作用もする。
  3. 潅水の方法
    二通りある。一つは回数を少なくして一度にたっぷりとやる方法である。もう一つは如雨露で少量ずつ一日に数回やる方法である。少量ずつ何回もやる場合は、根が表土に浅く一面に張ってくるので成育が非常に良いように見えるが、うっかりして水をやるのを忘れると、いっぺんで枯らしてしまう危険がある。なるべくなら、回数を少なくして一度にたっぷりやった方が、根を深く張らせるので安全だと言える。
  4. 潅水の量
    季節、土の状態、地下水位の高低等が、 各栽培地によってまちまちであるから、この位やれば良いと言うことは一寸言えない。結局土の表面がひどく乾き過ぎないように、カンカン照りつける夏は、他の季節より回数を多くしてやると言うことである。例えば、夏雨が少なくて乾燥している時は、1週間に一度は、1坪当たり大バケツ4〜5杯以上やる。即ちバラは大変水を好むものだと言うことを忘れずに、土中15cm位は滲透するように権水してやれば間違いない。
  5. 潅水の道具
    バラの潅水は、草花等と違って常に根の先まで届くようにバケツかホースで十分やらなければならない。ホー スで強い水圧をかけて潅水すると、土を跳ねて黒星病の原因となるので、蓮口を付けるか、布袋を付けて株間にかけるか、バケツで十分に流し込む等の方法が良い。盛夏の午前中には、時々葉面に蓮口で潅水してやれば、蒸散作用を抑えて葉の光合成を助け、葉ダニの害も防げることになる。

(2) マルチング

  1. マルチングの効果
    マルチングとは、バラが植えてある床の地表面に藁や 枯草、牛糞、籾殻、バーク堆肥、ピート モス等を敷き詰 めて覆ってやることである。マルチングは、

    (長所)
    • 水分の蒸散を防ぐ
    • 地温の上昇を抑える
    • 雑草の発芽を抑える
    • 土の跳ね返りをなくして黒星病の蔓延を防ぐ
    • 土の固まるのを防ぐ
    • 保水効果が有るので、潅水の量が少なくてすむ
    と言うことで夏の成育を助ける。

    (短所)
    • マルチングの材料が肥料分を吸収し、腐り始めると肥料分を放出して肥料の調節がやり難くなる
    • カミキリ虫の産卵や幼虫の発見が難しくなる
    • アシブトガやヨトウガの幼虫の逃げ場を広げる
    • 年中施した場合は、春先に土の温度上昇が遅れる(普通は4月~10月実施)

  2. マルチングの仕方
    雑草を取り、中耕をしたら、マルチングの材料を厚さ3cm ~5cm位に敷き詰める。庭園の場合は、美観を損ね たり悪臭が有っては困るので、材料を考えて実施する。

6 剪定と整技

(1) 剪定と整枝の意義

 バラは、古い主幹枝はだんだん衰えていく代わりに、 毎年何本かの新しいベーサルシュートを出して自ら若返りながら成長していく為、毎年枝を切り込んで木を常に若々しく保ってやる必要がある。この様に木の新陳代謝を図り、かつ、樹形を整えて鑑賞効果を高める為に茎や枝を切除する事を言う。

(2) 剪定の目的

  • 枝数を制限することによって、一枝当たりの養分や水分の供給を増やし、貧弱な花を減らして花の質を良くする。
  • 老化した枝を捨てて、新しい枝に更新することによって木を若返らせる。
  • 病虫害を受けた枝を切り捨てて蔓延を防ぐ。
  • 込み合った枝を間引いて、通風、日照を良くし、健全な枝を育てる。

(2) 剪定の種類

  • 剪定の強弱
    • 強剪定 剪定の深さが、株全体の高さの2/3以上を切り捨てるもの
    • 中剪定 剪定の深さが、株全体の高さの1/2程度を切り捨てるもの
    • 弱剪定 剪定の深さが、株全体の高さの2/3以上を残すもの

    花を沢山咲かせるには弱剪定の方が良いが、古い木を出来るだけ下の方から芽を出させ木を若返らせる必要が有る場合は強剪定をする。然し、強剪定をすると、花数が少なくなる嫌いがある。亦鉢仕立てや密植の場合は、 細立ち、充実していない枝等は強剪定をしてやらなければならない。年数の浅い木は、充実しているので弱剪定する。中には、強剪定を嫌う品種が有るので注意を要する (ピンクラスター、相馬、クリスチャンディオール 等)。


  • 季節の剪定
    • 冬の剪定(2月中旬〜下旬)・・・・・強剪定
      病気の原因になる未熟枝や病気に侵された枝、直径5mm以下の細枝は、全部切除する(残っている葉も全部取る)。3年以上経った古い茎で、老化して表皮の色も変わり、上にあまり良い枝が出なくなったものは、根本から切除する。
    • 秋の剪定(8月25日~9月10日)・・・・・弱剪定
      秋の剪定は、冬と違って木が成育中なので、あまり深く切ってはならない。今年出たシュートは、5段位伸びているものは、3段目、3段伸びているものは2段目の良い葉の付いている芽の上5mmで角度を付けて切る。
      古い2年以上の枝は、春最初に伸びた枝から数えて2段目〜3段目位で切る。弱っている木やすっかり下葉が落ちてしまった木は、芽立ちが悪いので浅く切って葉を多く残すようにする。小枝を斜めに寝かせてやる。
    • その他の剪定
      • スタンダード(ウイピング)
        伸び過ぎて形を乱したり、風害を受けたりしないように、強い剪定が必要である。特に全体の枝が平均して四方に伸び均整の取れた木に育てることが大切である。新しい枝を残して、古い枝、細い 枝等を切り捨て、外芽で花が平均して付くように する。
      • 姫バラ
        株立ちが多く、その上細かい枝が多いので、太い枝を3~5本位残して、細枝は全部根本から切除する。太い枝も深く全体の1/3になる位に切った方が、年々新しい枝に更新する様になる。
      • 蔓バラ
        1. 蔓バラは前年に伸びたシュートに花が咲くので、一度花の咲いた古い枝は切除して、シュー トを更新してやる。
        2. 新しいシュードの出ている枝だけを残し、古い花の咲いた枝や老化した枝は全部切除する。
        3. 古い枝の中程から新しいシュートが伸びていることも多いので、新しい枝が伸びたものは残す様にする。
        4. 残した枝の先端で、未熟な葉の付いた処や直径5mm以下の細かい部分は切除する。
        5. 枝を止める時は、枝が出来るだけ水平になる様に曲げていく。 枝先が水平になる程花付きが良くなり、垂直だと花付きが悪くなる。
        6. 枝先が水平より下がると、枝の老化が早くなる。

7 病虫害の防除

 上手にバラを作る為には、先ず合理的に危険性を少な くして病虫害を防除しなければならない。病気や虫が出 たからと言って、むやみに薬を撒くことだけはやめて、 病気や虫の性質を良く知った上で防除法を考えるように する。

(1) 薬の選び方

 現在市販されている農薬には、乳剤、水和剤、粉剤、粒剤、スプレー剤等があるが、選ぶに当たっては有効期限を確かめ、劇物や毒物と指定された毒性の高い物は特に取扱を注意し、又使用に当たっては同じ成分の物の連用を避け(抵抗性が出来て効かなくなる)、2、3種類の成分の違った薬を使用するようにする。

 農薬散布には、適期、適量、適薬と言う三原則が有る。 敵期とは、散布のタイミングで、一番病気や害虫の抵抗性の少ない時や、これから繁殖しようとする直前を言う。適量とは、使う薬の量が適正である(濃度)と言う事で、多過ぎれば効果は出ても薬害が出たり、経済的にも無駄であり、逆に少なければ効果がない。適薬とは、 病気や害虫に適応した薬を言い、選び方を間違えた薬は、いくら散布しても効果は無い。

(2) 農薬の撤き方

  • 展着剤
    展着剤は、薬の被覆面積を広げたり、薬剤を植物に良く付着させる効果が有る。展着剤不要の指定が無ければ、必ず入れる様にする(乳剤は展着剤不要)。
  • 散布の時期
    殆どが病気の予防の為であるから、病気の原因になる胞子の発芽を抑える為に、雨の前か後の空気中の湿度の高い時や、雨等で水分が有る時の前後が一番効果的であ る。又病気発生の初期に集中して散布するのが一番良い。害虫の場合でも、同じく発生の初期に集中して散布する。
  • 散布の方法
    散布の方法は、葉に着いた薬が雨等の水で溶けて、こ の水分で発芽した病原菌の胞子を殺すのであるから、特に葉裏に満遍なく着く様に噴霧機の圧力を強くして、少し遠くから散布する。葉に薬が溜ってポトポト落ちる様な散布は、薬害も出やすく感心しない。一度散布して乾かしてから、再び位置を変えて死角の無い様に繰返し散布するのが最も良い方法である。
    害虫に対しては、接触剤(虫の体に直接振りかける)と滲透剤(吸汁性、食害性の害虫)で殺す薬品が有る。
  • 散布の薬量
    薬の量は、バラの成育状況と睨み合わせて定める。若い新芽の伸び初め頃は、薬害が出やすいので特に注意を要する。休眠期が最も濃く、花の済んだ成熟期は普通の濃度、発芽期や若葉の頃は一番薄くする。
  • 散布上の注意
    • 散布の際は、ゴム手袋、マスク、眼鏡等を着用する。
    • 出来るだけ風の少ない日を選んで散布する。少しでも風が有る時は、風上に体を置いて散布する。
    • 極端に暑い日は、日中はなるべく避け(薬害が出る) 、朝夕の涼しい時に散布する。
    • 薬品は、水に溶いてからは時間が経つと効き目が無くなるので、その都度作る。
    • 散布後は、必ず石鹸で顔や手を十分に洗うか、入浴をする。
    • 質の防止
      • 乳剤は、必ず密栓をする。
      • 粉剤や水和剤は、袋のまま空きカンに入れて混気を防ぐ(直射日光の当たらない場所に保管)。

(3) 病害虫の予防

 厄介な病虫害に侵されてからでは、完治はなかなか困難である。機械的な予防法でなくて、病虫害の本質を良く知って予防すれば容易に防ぐことが出来る。病虫害は、薬さえ散布すれば防げるのではなく、出さない様に心掛け、木を健康に育てて抵抗力を持たせ、薬は適期、 適量、適薬の三原則を守って使用すれば、失敗無く防ぐことが出来るのである。