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ローズ・ふくおか アーカイブス 2004-14 すばらしい日本のばら園

すばらしい日本のばら園   セドリック・フォスター
平成16年/2004 No.14 掲載

【訳者から  :  フォスター氏は、オーストラリアの東南端ヴィクトリア州、 ベイズウォーターと言う町で、ご自分の庭に200本のバラを育て、近辺のバラ愛好家のお世話もなさっている、根っからのバラ好きです。  ご令息が日本人の奥様とともに福岡にお住いなので、時折ご夫妻で訪日されますが、その折りには 日本各地のバラ園を見学され、日本のバラ愛好家とも話し合うという研究熱心な方です。

 2002 年来日の際に見学された日本バラ会の本部展や西部ドームのショー、それに大阪のバラ園などを紹介された記事を、『オーストラリアばら会の 2003年の年報』に寄稿され、日本ばら会の会報『ばらだより』2003 年3月号にも、その訳文が掲載されました。

 今回の記事は、2003年5月に来日された際にご覧になったバラ園や個人庭園などについてのご感想を述べられたもので、これも、『オーストラリアばら会の 2004年の年報』に掲載されました。福岡のバラ愛好家の方々のお庭や活動のご様子も色々書かれています。フォスター氏のご要望で、訳文を福岡バラ会の会誌に転載させていただくことになりました。お世話にになった皆様に、くれぐれもよろしくとのことでした。 小川 晶 】


 孫の元気な顔が見たくて、家内とともに福岡の息子夫妻の家を訪れたのは、2003年5月のことでした。  日本滞在の間、私たちは五つの公共バラ園と、10 の個人庭園を見学する事ができました。 中でいちばん大きく、面白い特色があると思われたのは、岐阜の花フェスタ公園のバラ園でした。
日本ばら会の小川晶教授と、ボランティアとして常時このバラ園の管理を手伝っておられる浅見貴子氏が、案内の役をして下さいました。

 このバラ園は、名古屋から内陸に60キロメートル入ったところにあり、周囲3キロに及ぶ土地に67,000本のバラが植えられています。      私たちが訪れた時には、園内の広大な区域で新しい花壇の造成が進行中で、2003年から 2004 年にかけての冬の季節に、更に 13,000 本のバラが植え込まれるとのことでした。   完成の暁には、計 80,000 本のバラが見られることになります。   緑の岡を背にしたこの公園の眺めは大変美しいものでした。

 このバラ園には極めて数多くの、また多岐にわたるバラの品種が集められており、私たちは丸二日かけてここを見学しました。原種バラの区画には広範囲にわたる品種のよく育った株が見られ、5月20日現在、多くはまだ蕾をいっぱいつけ、花がちらほらといった状態でした。原種バラは種類ごとに区分された区画に配置され、どの区画のバラにも、品種の特徴や原産地が明確に分かるよう、英語と日本語のラベルがつけられ、見る人の興味をそそるものになっていました。

 原種バラだけでなく、オールドローズから最新の近代バラ品種にいたるあらゆるバラが見られるという感じで、幾つかの区画では、マグレディー、ハークネス、オースティン、 メイアン、コルデス、それに京成バラ園芸など、作出者ごとに品種がまとめて展示されていました。   この方式は、現在造成中の新しい区画にも適用され、世界の主な作出者の花壇が見られるようになる予定とのことでした。それ以外にも、日本、米国、英国、フランス、ドイツなど、国ごとに分けられた近代バラの区画もあり、また、岐阜国際バラコンテストのための試作場として、特別に一区画が設けられていました。

 英国王立ばら会から派遣されたデイヴィッド・スティーブンズ教授の設計になる英国風のバラ園では、さまざまなコンパニオン・プランツとバラとの組み合わせが見られました。/p>

 また、つるバラや大きいシュラブローズが、バラ園の随所に目立つよう植え込まれ、 花壇にアクセントを添えるものになっていました。  HT、フロリバンダ、オールドローズタイプの近代バラは、腰の高さより下のところに花を見せるよう低く剪定されていて、特にオースティン氏のイングリッシュローズは、上向きの花が木一杯に見られると言うことで、これは効果的な演出方法と思われました。/p>

 バラ園以外のところでも、この岐阜の公園には樹木を配した広い芝生、屋根付きの音楽堂、それに食べ物を売る屋台などがありました。  屋台の中にはおよそ考えられるあらゆる種類のバラグッズ、例えば香りの良いバラに似た味がするバラ風味アイスクリームなどを売っているものもあり、中でも人気はイングリッシュローズ・ジャムでした。  あなたのお好きなのは、「サー・エドワード・エルガー」ジャムでしょうか、それとも「セプタード・アイル」ジャムでしょうか。 バラの香りのお茶、ヨーグルト、ケーキはいかがでしょうか。 |/p>

 他にも、お客様の気をそそるものがたくさんありました。 エレベーターで80メー トルを上がると広い展望台があり、快適なレストランでお茶やケーキを楽しみながら、バラ園の配置を視察し、周辺の山々の景色を眺めることができます。 3キロメートルを歩いて公園を一回りするのが億劫でしたら、園内を回る小さな列車に飛び乗って、次々と目に写るバラを楽しむこともできるのでした。/p>

 小川教授はまた、東京近郊の千葉県のバラ園二箇所にも案内して下さいました。 一つは習志野市の谷津遊園、もう一つは八千代市の京成バラ園芸のバラ園です。  どちらのバラ園にも入場券を買う人々の長い列ができていて、園内では何百人という観客がバラ を眺め、写真を撮影していました。
京成バラ園芸ではバラの販売をする場所もありましたが、このバラ園に至る道筋は大変な車の列でした。 幸い、電車の駅から乗った私たちのタクシーは、裏道をたどってくれたので、割と早く着くことができました。

 この二つのバラ園はいずれも美しくデザインされ、手入れも行き届いていて、数多くのバラの種類を見ることができました。  しかも、私たちが訪れた5月の終わり頃にはバラがちょうど見頃で、園内を巡るのは本当に楽しいことでした。
京成バラ園芸のバラ園は、【面積 30,000㎡】、【7,000 本のバラ】が植えられていて、この 会社で作出された品種が多く見られました。  「アンジェラ」を絡めた柱が特に美しく、印象に残りました。

 谷津のバラ園では、園内の大きい区画がフロリバンダをかためて植えたものになっていて、さまざまな色合い、形のバラが色彩の波となって目に迫る感がありました。  この区画を見下ろす周辺の歩道には、美しい「ピエール・ド・ロンサール」など、さまざまな品種のつるバラを絡めた二列のアーチがあり、その下を歩きながらバラ園をながめる仕組みになっていました。

 この日には、また、近くのローズ・ガーデン・アルバで行われたガーデン・パーティに参加することができました。  集まった人々は、皆親切、しかもバラに詳しい仲間で、園内のバラも素晴らしく魅力的だし、ご馳走も美味しいものでした。  このバラ園は、京成バラ園芸で長年にわたり作出の指導的な地位にあり、「聖火」や「光彩」などの生みの親として知られる鈴木省三氏のコレクションを中心としたものです。  氏が愛培していたオールドローズや近代バラの興味あるコレクションを始め、珍しい原種バラも数多く見られました。  その中でも、サンショウバラは喬木のように成長し、樹皮が刺落する面白いバラで、富士山近辺で見られるとのことでした。
白い花ですっかり覆われたノイバラの巨木もありました。  甘い香りを放つこのバラは、 日本でも人気のある野生のバラということです。  このバラはオーストラリアでも、バラを接ぐ台木に使用されています。  このアルバでの夕べのパーティは、特に、印象深く、記憶に残っております。

 これらの大きい公共のバラ園とは対照的に、日本の個人庭園の多くは、小さいスペースをいかに有効に使ってバラを植えることができるかのお手本といった観があります。 特に興味を惹かれたのは、東京の近郊地域のバラ会の一つ、茨城バラ会の会長、高野 浩 氏の個人庭園でした。  高野氏は、バラを育てるために独自の肥料造りの方法を開発されました。  この肥料は大変効果が高く、とくにバラ造りを目標にしていない人々も、この方法を学ぶために、20人ほどが加わったと聞いております。  私の察するところ、 こうした人々も、高野氏の熱意とユーモアのセンス、それに、お人柄に惹かれて氏のお好きなバラをいくつか植えることになるでしょう。  高野氏は400種、700本のバラを作っておいでですが、どの木も健康そのもので、成長力旺盛、沢山の花を咲かせておりました。
氏のバラ園は二つあり、いずれもオーストラリアの基準からすれば、規模が小さい方ということになるかと思われます。  お宅の敷地のバラ園は、HTやフロリバンダ、シュラ ブ・ローズなどが他の小さな樹木とともに植えられていて、堅苦しい感じがなく、くつろ いだ気分で中の小径をあちこち歩き回ることができました。  氏は、道路を挟んだお姉様のお宅にもバラ園をお持ちで、こちらはHTのお庭でした。  一部には大きなビニールの屋根が掛けられていて、その他のバラは覆いなしで育てられていました。  バラは いずれも枝先から根本までつややかな葉で覆われ、あまりにも大きく育っているので、花の写真を撮るのに脚立が必要なほどでした。  私たちがお宅に着いたとき、高野氏は様々な色のバラを切ってバケツに活けておいででしたが、特に目に付いた素晴らしい花は、 「プリンセス・ノブコ」(デリケートなピンクの色合い)、「熱情」(濃い赤色)、「初雁」(ごく淡い藤色で、弁の縁にライラック色がさす)、それと「アドミラル・ロドニー」でした。

 東京・田園調布の清原滋子夫人のお宅にも伺う機会がありました。  3階建て家屋とフェンスの間のお庭は、狭い空間を使って作られたものでしたが、つるバラ、ランブラーなどが柱、壁、アーチ、フェンスを覆って枝垂れ、小型の品種のバラとの組み合わせが晴らしい効果を挙げていました。
豊かな想像力を印象付けるこの美しいお庭は、日本の雑誌で紹介されたことがあると伺いました。

 同じように優れた想像力を伺わせる美しいお庭を、福岡の水町氏ご夫妻のお宅でも拝見することができました。 ここは、清原夫人のお庭よりずっと大きく、オーストラリアの多くの家庭に見られる規模のもので、200本のHT、フロリバンダ、イングリッシュ ・ローズ、つるバラ、スタンダード、鉢植えバラなどが、様々なコンパニオン・プランツや、ツツジなどと共に植えられておりました。 これらが広い芝生の周囲に配され、色彩、高さなどは多様ながら、調和がとれていて、気持ちの良いお庭でした。  このお庭もいくつかの雑誌に取り上げられたとのことでした。

 福岡では、地域のバラ会が企画したお庭拝見のツアーに参加させていただき、90人の熱心な会員とご一緒して、2台のバスで6軒のお宅に伺い、お庭を見せていただきました。 これらのお庭のバラ数は、120本から200本と様々で、種類もHT, フロリバンダ、 ミニバラ、イングリッシュ・ローズ、ランブラーなど多用でした。  幾つかのお庭では、HTを大きいビニールの屋根の下で育てておりました。  フロリバンダやミニバラが、 お庭のコーナーを埋めたり、ベランダを飾ったりと、効果的に使われていました。  ファミリー・レストランでの和食のお昼も美味しく、バラを愛する大勢の仲間と共に、楽しい一日を過ごすことができました。

 日本におけるバラの人気を改めて印象付けられたのは、東京から福岡へ戻る新幹線が停車した福山駅のプラットフォームで、巨大な看板を見たときでした。 バラで飾られた 大きな文字で、FUKU-YAMA・・CITY OF ROSES と書かれていました。
今度は、是非、ここを訪れねば、との思いをいたしました。

 日本の多くのバラの友人たちが、親切にいろいろな情報を提供して下さったことに、心から感謝申し挙げます。


付記

 翻訳をお送りいただいた小川 晶さんからは、冒頭にありましたように、フォス ターさんからのご依頼で本文をお送りいただきました。  これは2004年3月に発行される『オーストラリアばら会の年報』に掲載される予定のものです。

 福岡で教鞭をとっておられるご子息夫妻やお孫さんにお会になられるという表向きの理由で毎年、来日され、ご夫妻でお好きなバラ園めぐりをされるのは羨ましい限りですね。

 そのうちに、日本のバラ園について、日本人以上に詳しくなられることでしょう。

 フォスターさんご夫妻はもとより、翻訳を戴きました小川様にも御礼申し上げますとともに、掲載をご許可いただきましたオーストラリアばら会のご好意にも心 から感謝申し上げます。

福岡バラ会会長 田中丸 善彦

※Mr. & Mrs. Foster と 小川 様 の住所

Mr. & Mrs. Cedric Foster (奥様のお名前は Nancy)
  2 Karalee Court,Bayswater, Victoria, 3153, Australia

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