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ローズ・ふくおか アーカイブス 1982-1「これからの我が夢 一 接木の巻」

これからの我が夢 一 接木の巻   松岡 初義
昭和57年/1982 掲載

 バラを作っていると、いろいろの種類のものが欲しくなる。ゴマンとあるバラの種類の中から、自分の好みと規模に合わせて作っているのであるが、数年もたつと気が変る。他人の花はよく見えるという、ついそちらに気が向く。人間の盡きることのない慾望の現れか。

 いつだったか、大神先生の御自宅で、バラの栽培技術の講習会があったとき、先生から芽接ぎの技術の手ほどきを受けた。かねて接木で増やすということは知っていたが、目の前で接木の方法を見せてもらったのは、それがはじめて。以来閑さえあれば台木と穂木を探して、せっせと接木の練習。その年は1000本ぐらい、今は年に2,000本余り接いでいる。しかしよい台木がなかなか入手できない。近くの山や鉄道線路脇から採取してくるが、数が少く質も悪い。最近は太田先生や釜瀬先生から戴いた台木を挿木したものが成長して増え、これに直接、接木している。

  よく成長した台木だと、1本で60枚以上も葉がついたのがある。2本分のバラ苗には、2枚の葉がついておれ ばよいから、1本の長い台木から30本ほどバラ苗がとれる勘定である。芽接ぎは台木の下の太い方から2枚の葉毎に連続して上の方に接いでゆく。下の太い方は楽に作業ができるが、細くなると難かしい。しかし、次第に細くなっているので、何度もやっているうちに腕が上って、 相当細いところでも接げるようになる。この芽接ぎは活着率は非常によい。90%を越すだろう。

 接木の本を見ると、いろいろな接ぎ方がある。長い台木に連続して接ぐのに都合のよい別の接ぎ方に「腹接ぎ」がある。これは穂木の芽のすぐ下を2cm程、片楔形に削り、 台木は長さ2cm、深さ3mmほどに切り下げ、ここに穂木 をさし込むだけ。この方法だと簡単で1年中接木できる。 そして成長が早い。夏だと3か月位で知らぬ間に花が咲いている。ただ活着率は芽接ほどはよくないようである。

 こうして台木に活着したものを夫々1本分に切り離し挿木し苗に育てるが、この挿木が難かしい。せっかく接木で活着したものが、挿木の段階で全部枯れてしまったことも、しばしば。山などから切り取ってきた台木は、 接木と挿木を同時にしなければならないので活着は一層難かしい。人間に例えれば、首のすげ替えと脚の付け替えの大手術を同時にやって「面会謝絶、絶対安静、点滴、酸素吸入」というところ。バラはこの間、10日余りは生死の境をふみ迷うことになる。普通のように1本分の根のついた台木に接木したことは、あまりない。

 猫の額ほどの狭い我が庭では、成木を育てる余裕は、もはやない。これからは従来の平面から立体へと、空間を利用するしかない。好みに応じた高さのスタンダード仕立ても、いいものである。果樹では台木の種類によっ て、果物の味が違うそうである。バラでも台木の種類によって、花に変化があるのではあるまいか。とにかく、こうして苦労して苗ができ上ったときは、また格別に楽しいものである。あまりトゲのない、すんなりと太く伸 びる種類の台木を手に入れ、もっと接木をしてみたい。

 KKO 80-K(太田 嘉一郎・作出) ピクニカ X マーガレット