ページ

ローズ・ふくおか アーカイブス 1999-10 バ ラ の 中 の 百 舌 の 巣

バ ラ の 中 の 百 舌 の 巣   桑原 睦子
平成11年/1999 No.10 掲載

 居間から見える所に、バラを百本ばかり植えている。殆ど二十年以上のもので、種類は色々である。中でもコクテールという 真っ赤なクライミングローズは、すごく大きく壁のように茂っている。花の盛りの時は、火が燃えているような圧巻である。

 この庭は、通りから奥まっていて小鳥には楽園なのか、沢山来るのでさほど気にも止めていなかったが、じっと眺めていると小鳥がそのバラの中に、しきりに出入りしているのに気がついた。それも同じ場所からだ。少々興味をもちはじめ、ある時そっと覗いたら、そこには巣があって、中に鳥がじっとしゃがみ込んでいた。目だけをギョロリとさせ、のぞき込んだ私を見た。小鳥もびっくりだろうが、私も驚いた。

 三十年からバラを育てていて巣を作ったのをはじめて見た。それからその巣が気になり、始終のぞき込むようになったが、いつ見ても親鳥が頭だけ出して、あたりを警戒しながらじっとしゃがみ込んでいる。その鳥はどうも百舌のようだ。百舌は猛禽だから用心しろよと家人に注意されるが野良猫がいるのでそれが気になり、花の盛りの時はそうでもなかったが散りはじめるとが見えやすくなる。夜になると木の下に行って、雛の鳴き声でもと、耳を欹ててみたりした。

 それから四、五日経った日、庭の親鳥の動きが少し違い、はげしくなった。親鳥のいないすきをみてじっと巣の中をのぞき込むと、雛が二羽生まれているのだ。現いた私を親鳥と思ったのか、黄色い口を大きく開けて声を揚げていた。私もびっくりした。それからを見るのが楽しくなった。 毎日現いた。

 五、六日もしたろうか、のぞいた巣には何もなくも、ビニールで編んだ木の葉の巣だけが、空のままつるばらの中に、ポツンと淋しく残っていた。あまりにも早い巣立ちなので、或いは親がくわえて移動したのか、又猫にでもとあれこれ思いめぐらしていた時、ある方から野生の鳥は早いのは一週間で巣立ちしますよと聞き、それでは無事に巣立ったのかなぁと安心したのだった。佐渡の朱鷺も順調に育っているし、きっと元気に飛び立って行ったのだろう。わが家の百舌も又来年は古巣の庭に来て子を産んでくれることと思い、巣はまだそのままにしている。

(小鳥のおかげで、思うように消毒が出来 ず、黒点病が遠慮なくはびこった)

蔓薔薇の茂みに作る鳥の巣の
       なんと見事なビニールと落葉


猛禽の百舌は人の目狙うかも
       我に注意を促す夫