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ローズ・ふくおか アーカイブス 1995-1「ばら栽培と農薬について」

ばら栽培と農薬についてー ARS会員の意見から   瓜生 典清
平成7年/1995 No.8 掲載

 狭い国土におびただしい農薬が使用されている我が国の農業の現状、さらには次々と作り出される農薬の使用 に自ら人体実験を買って出ているとも思える農業従事者達の姿勢に対し、有機農法の実践でできるだけ国土の汚染を少くし、国民の健康に配慮している心ある人達の存在も確かなことではあるが、全体の方向は決して好ましいものではないであろう。

 その中にあってわれわれ rosarian は如何にあるべきか。

 アメリカばら会の会誌 Am erican Roseの最近着7月号(1995年)の記事から目についた2つを紹介してみたいと思う。 Letter to the Editor(編集者宛の手紙)の中から1つとQ&A(質問と解答)の中から1つ、私自身かねがね関心のあることでもあったので興味深く読んだ記事である。

 多少ぎこちない訳文だと思うが、アメリカばら会員の寄せる関心の一端を知って頂けるならばと紹介する次第である。

その1

Dear Editor : "1995 American Rose 3月号" の論説を読んで応答したく思いました。引用してある "U.S.News" は読んでいませんが、私は多分書かれていることの大部分に同意すると思います。 私はアメリカばら会は現実の世界に入ってくる必要があると信じます。という意味は、ばら育成者達が永年使用してきた殺菌剤、殺虫剤およびその他の有毒化学物質は、環境やわれわれの地球を気遣っている者には最早受容できないということです。私は、一般大衆はこれらの生産物が使用されるとき、環境およびわれわれ自身両方にとっての可能な有毒な結果をより一層知って来たということを信じています。私は、本当にこの惑星を、いくつかのハイブリッド・ティー(H.T.)さえも愛していますが、もしそれらが殺菌剤や殺虫剤の使用なしに生き残ることができないとするならば、これらの化学物質で、空気、水および地球を汚染し続けるよりも、それらはばらの天国へ行ってしまう方がましだと思うのです。

  私はアメリカばら会ならびにばら(H.T)は、姿勢と信念の大きな変革が実現されない限り絶滅のリストに載せられていると信じます。大多数のアメリカ人は時間とエネルギーが不足していて、彼等の庭でメンテナンスに手のかからない植物を必要としています。通常のH. T.は、そうではありません。私にはアメリカばら会はばら文化について専門家の助言の宝庫であり、将来のばら育成者達が有毒化学物質を使用することなくやって行ける必要に応えることにもっと関心を持って頂きたいし、環境に決して優しくない殺菌剤や殺虫剤の使用をもはや推進するようなことはしないで頂きたい。さらに、ある地域での成育良好なばらのリスト作りは、最近発表された等級付けよりもずっと有用と思われます。

 私自身のばらは、その大部分は伝来のばら(heritage rose)であるが、何ら殺菌剤、殺虫剤を使用することなく非常によく育っている。あぶら虫は、てんとう虫が引き受けてくれるまではにんにく(註1)とホットソー ス(註2)の撒布で処置しており、黒点病は早春に水でといた重曹(註3)の撒布で処置している。私の植物は、時として病気や虫害の兆を示すが、彼等も私もそれで蹂躙されることはない。

 私はまたセイタカアワダチソウの有害について異議を申し立てたい。実際セイタカアワダチソウはアメリカ人の現れている環境意識に対する完全な象徴である。というのはばら育成者の甘やかしなしに、ほとんどどこでも 生育するからである。さらにご承知のようにセイタカアワダチソウの花粉は蜂によって分散されるもので、風媒のものではなく、したがって花粉症の原因とはなり得ない。

 ただ願わくば、アメリカばら会がばら文化の将来を殺菌剤や殺虫剤の全面排除への眼をもって見据えて頂き、病害に抵抗力ある新旧のばらの種類の普及を支援して頂きたいものである。

 New Rose Societyを待望して
Patty Haack

  • 註1. あぶら虫に対するにんにくの共生植物としての効用は昭和59年版の「ローズ・ふくおか」の拙文を御参照下さい。
  • 註2. 原文にはhot sauceとあって私には意味がつかめません。御教示頂ければ幸いです。
  • 註3. 原文にはbaking soda/waterと記述されています。水で溶いた重曹としましたが私の知識外のことです。ばらのテキストのどこにも見たことがありま せん。黒点病対策としてどうなのか御教示頂ければ幸いです。

その2

Q. from Pennsylvania :

 今年Japanese beetles(日本こがね虫、はなむぐり のこと)がゼラニウムに引きつけられ、明らかにそれに よって殺されているのに気づきました。シーズンに亙って、恐らく50から100匹位、彼等がゼラニウムの葉や蕾の上であるいは下の地面に死んでいるのを見付けました。

 (これらのゼラニウムは窓箱window boxに植えています。)こがね虫は普通ゼラニウムに引きつけられるのでしょうか。その魅力は致命的なものでしょうか。ばらへのこがね虫の攻撃を減らすために、ばらのベッドの近くにゼラニウムを植えることを考えてもよいのでしょうか。

A. :

 多くの種類の植物は天然の殺虫剤や駆虫剤を含んでいます。ロテノン(植物性駆虫剤)はデリス植物の根から抽出したものです。ある種の菊は粉末除虫剤を生じます。ヒエンソウ、にんにく、マリーゴールドおよびゼラニウムは各種の昆虫を、たとえ殺さないとしても、 追い払うことが報告されています。問題は、これらの主張が、多くはそれを支える科学的データに乏しい話の種だということです。あなたの特殊な状況において、 日本こがね虫がゼラニウムに引き寄せられたのみならず殺されたというのは確かなように思われます。それは白いゼラニウムに対して引用されているいくつかの 類似の話題への支持を付け加えるものです。 (R.B.Y epsen, Jr. Encyslopedia of Natural Insect and Disease Control, 1984, Rodale Press:Emmaus, PA).

 窓箱のゼラニウムが、たとえどんな役割をするにせよ (またそれは綺麗ですから)取り付けてみたいと思います。がしかし似たような結果が得られることを希望して、ばらの中や近くにゼラニウムを植えることはやはり躊躇致します。その現象がたとえ本当に起こった としても、非常に首尾一貫しないものでしょう。効果においては数多くの変数があり、時としてそれは効力があり、また時として効力がないでしょう。初期の襲来に対しては手でつまみ取り、大きな襲来に対しては、 必要ならば、化学薬品の撒布は、こがね虫を抑制する唯一の有効な方法でしょう。

(平成7年7月記)