土壌検査票の読み方 吉田 博美
平成22年/2010 No.21 掲載
1 バラ園の土壌と肥料
土壌調査結果とその対処法については、個別の分析値だけでなく、お互いの項目間のバランスに配慮するなど、複雑な対処法が必要で理解するのにご苦労されているのではないでしょうか。 これらについての基本的な考え方を述べたいと思います。
- 塩基置換容量(CEC)は、土壌がCa,Mg,K等の塩基を保持できる力を表しており、数値が多いほど肥料を保持する力が強く、保肥力のある良い土といえます。
土づくりのためにはこの塩基置換容量を高めることが大切で、堆肥等の有機物の施用あるいはゼオライト等の塩基置換容量の高い資材の投入が必要です。 - 腐植は有機物が分解されて非常に小さな粒子となったもので、マイナスの電気を帯び塩基置換容量を高めます。土づくりには、この腐植含量を高める必要があります。
- PHは土壌の酸度、すなわち酸性、アルカリ性の度合いを表します。バラは弱酸性を好むので、酸性が強い場合は消石灰や苦土石灰等を施しPHの調整を行います。
- EC(電気伝導度)は、土壌中の水溶性塩類の総量を表します。通常、土壌のECは硝酸イオンとの相関が高く、土壌中の硝酸態チッソ含量の推定に利用されます。
- 硝酸態チッソは硝酸の形態をしたチッソという意味で、乾燥した土壌100g中に含まれるチッソの量を㎎で表します。畑状態の土壌中のチッソは硝酸態チッソの形で吸収されますが、植物に吸収されなかった肥料は雨によって流亡しやすいという性質があります。
- 塩基とは石灰(Ca)、苦土(Mg)、カリ(K)のことをさします。バラにとって、これらがどのくらいあるのが適正かは、それぞれの量だけでなく、お互いがバランスよく含まれていることが大切です。
- 塩基飽和度は、上記の塩基が塩基置換容量の何%含まれているかを表しています。全塩基の飽和度は60~80%程度含まれると、PH6程度となり適正だといわれています。また、それぞれの塩基ごとの適正な飽和度もあり、通常Ca:Mg:Kがme(ミリグラム等量)値で5:2:1の割合で含まれているのが良いといわれています。
- 有効態燐酸は、数年たったバラ園では軒並み過剰に含まれている実態があります。燐酸は、土壌中から流亡することが少なく、バラに吸収されなかった燐酸が年々蓄積しています。また、良いバラを咲かせるためには、燐酸をチッソ肥料より多く与える必要があるとの神話に基づき多量施肥した結果でもあります。
- 酸吸収係数は、土壌が燐酸を吸収する力を係数化したもので、火山灰土壌では1500以上あり問題になりますが、福岡に多いマサ土等では特に問題はありません。
- Ca/Mgは、これらの養分吸収が拮抗状態にあり、両成分のバランスがよい場合に両成分の吸収が最高となります。
- Mg/Kは、上記同様に拮抗状態にあり、土壌中にMgが十分あってもKが多いとMg欠乏を生じやすくなります。
2 土壌調査結果と保肥力ごとの理想値
バラ園の土壌調査項目ごとの理想値は、土質や保肥力によって違いが出てくるので一概に表すのは困難です。そのため、土壌分析された機関によっても、理想値に差が見られます。
そのため、福岡で多くみられる真砂土(砂壌土)を想定し、保肥力の違いによりいくつかの理想値を出してみましたので、参考にしてください。