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ローズ・ふくおか アーカイブス 1982 第35回 九州・山口ばら懇話会福岡大会

第35回 九州・山口ばら懇話会福岡大会     釜瀬真寿子
昭和57年/1982 掲載

  • 第35回 九州・山口ばら懇話会福岡大会
  • 自 昭和57年6月12日(土) 14:00より 至 昭和57年6月13日(日) 13:30解散
  • 場所/福岡市 山の上ホテル

 第25回の昭和47年以来10年振りに福岡ばら会が引受けた懇話会は福岡市の中心部小高い丘の上のホテルで開かれ た。直ぐ近くには市の動物園あり、植物園もあって静かな環境、北に博多湾の雄大な眺めから黒田五十二万石の舞鶴城の外濠をうめた美しい大濠公園を見下し、南は背振山系に連るなだらかな山々を控えての絶好の立地条件のホテルだった。

 午前10時、かねて定めてあった部署に従って受附けの係りも各々落付いた頃、講演会場の演台のばらの盛花のこと、出席者につけて頂くばらのコサージュのこと等ハプニングはありましたが、ぞくぞくと入っていらっしゃる出席者のお顔が揃ぶ頃には懇話会らしい雰囲気となって、遠方よりの講師の方々の御来場と共に盛り上ってゆきました。

 御来賓4名 御招待3名 その他合計百名

14:00 総会

  1. 開会のことば副会長 太田嘉一郎
  2. 地元会長並び懇話会会長挨拶 田中丸善輔
  3. 議案審議議長 太田嘉一郎
    1. 議案審議議長 太田嘉一郎
    2. 昭和57年度行事計画並びに予算
    3. 昭和57年度ばら祭引受ばら会 田川ばら会の説明
    4. 昭和58年度懇話会引受ばら会 佐世保ばら会の説明
    5. 昭和59年度懇話会引受ばら会の決定(これは後日 久留米ばら会と決定)
    6. 其の他
    7. 閉会のことば

15:00 講演とスライド映写会

  1. 伊東良順氏
  2. 河野義人氏  楽しむばら作り
  3. 柴田昇氏 ばらとヴェロナへの旅
  4. 福島康宏氏 ばら苗の高植について
  5. 寺西致知氏

伊東良順氏

 千葉のお寺のご住職、ばらを植えられて30年余りになる由、いまだに素晴しい出品花でカップをさらいつづける辺り尋常一様なお坊さんではない。得意花はマックレディス・アイボリ、「アイボリ坊主」のニック・ネームすらある。『加里分は卒塔婆を焼いて補い、燐酸分はお手許でご不自由はない筈』と失礼な事を云ふ岡焼連中にも笑って聞き流されるおおらかさ。
 作出花の中に「いかるが」がある。色はうすい杏色で剣弁高芯の巨大輪で親のアイボリーを凌ぐ整形花、樹性は驚く程好くてステムは1米以上にのびる。春のばら展でも4日間はくずれない。数珠をまさぐりながら仰有る言葉は『一歩下って謙虚な気持で成育の手助けをし、常にばらとの対話に心掛ける事が大切』との事でした。終りに出品技術や組花についての注意など日頃の蘊蓄の程をご披露されました。10年程前にお目にかかった時よりますますお若くつやつやとしていられるのには驚きました。

河野義人氏

 寂光やプリンセス高松の作出家で、現在は山口市にお住いですが、3年程前までは東京展で大活躍をされ伊東良順氏と共にばら界切ってのオーソリティ。
 「楽しむばら作り」と題してコンテスト一本槍にならない事を理想としフロリバンダを植えることをすすめられて、日本の気候に合った病気に強い品種を植えて育てることを強調された。

柴田昇氏

 「ばらとヴェローナへの旅」と題して今年3月奥様とイタリアのヴェローナを旅行されました時のお話をスライドを交えてされました。その折の原稿をその後お願いして送って頂きましたのでのせさせて頂きます。演台の横に飾られた黄色のばらベロナは太田副会長の歓待の思いやりをこめてのことで正に錦上花を添えて見事でした。スライドも澤山に御披露頂いて、和やかな雰囲気に浸らせて頂きました。

福島康宏氏

 昭和55年から56年にかけて1年間ばらだよりに「季節の手入れ」を坦当された事は日本中のばら愛好家のすでにご 存じのことでしょう。熊本の農業高校の先生と伺いまし たが、さすがに微に入り細に渡って余すところなくお書きになっていらっしゃる。徹底した研究を重ねていながらその驕りの影すら見せないお人柄で、むしろいつも控目で恥しそうにしていらっしゃる、ばらと向い合っている時が一番お幸せの様に見受けられる。「ばらの高植え」についてスライドを写しながら話される。高植えとは台木に接いだ芽から下を5cmから7cm位地面の上に見える様に植えることで熊本のお庭拝見の折に見せて頂いたことがある。長所は癌腫病が見つかり易いこと、夜盗虫の予防になる、生育が好いこと、その内に土が落付いて丁度よ くなる等でした。この時浮羽の原田さんからシュートが出にくいと云ふ意見が出ましたが『それはお前の作り方が下手なんぢゃ』と、宇部の原田会長に一蹴される一幕もありました。その他、植床には堆肥を1㎡に4キロ近く入れて魚粉やカニガラ(これは花の芯を高くするため)等を使用されることなど話されました。

webページ編集者註:この経緯は、原田民雄氏による「バラの浅植について一言」と言う記事があります。

寺西致知氏

 日本ばら会関西支部長で伊丹ばら園も経営、九州山口懇話会にはかならずお見えになる。根頭癌腫病のお話と未発表新品種のスライドがありました。癌腫病の対策としてはコブを切り取り木質部を削り取ると変色した部分があるのでそこを深く取って電気ゴテで内部を1〜2分焼きつけると一応は癌は収まる。そうして出たら取りながら毎年きれいなばらを咲かせている人も有りますから癌と云っても恐るるに足らずとのお話しでした。

質問など

講演が終り質問となって熊本の後原さんが花に飛んで来る「カナブン」にはゴキブリに使用するゴキブリホイホイかフマキラーをさっと吹きつけると好いと云ふ経験談も出ましたけれど、フマキラーのために思わぬ大失敗をなさった方がおられますのでご注意を。浮羽の原田さんから台所の洗剤ママレモンを4倍にうすめてダニ殺しの薬にしたお話しがありました。但し7〜8月の高温時には薬害が出るそうです。種々と実り多いお話が終って、いよいよ楽しい懇親会となりました。

懇親会

 廣い日本間で8つのテーブルをかこみ落付かれた頃、会長の田中丸善輔氏の開会の挨拶の後福岡玉屋常務さんの 8田中丸善亮氏の乾杯の音頭で始まりました。メインテー ブルには東京から見えられた伊東良順氏、佐藤弘治御夫妻を始め、寺西致知氏や地元会長、副会長方が席をかこまれてご馳走に手をつけられる頃、いよいよ舞台の幕があいて婦人部のおどりが始りました。ご存じ黒田武士をおどられる花柳三之信さん、おてもやんの表情も面白く軽妙におどられる柿本夫人のお嬢さん、太田浩四郎夫人の長崎ブラブラも楽しく、私も日舞の重ね扇を踊らせて頂きました。高村あい子さんが大阪しぐれの女らしい振り付けをご披露されました。その他にも博多にゆかりの踊りをくりひろげて華やかな雰囲気となりました。とっておきの隠し芸も次から次ととび出したりしていよいよ終りに近づいた頃。
 かねて2回も猛練習を重ねました、博多どんたくの踊り、ポンチ可愛いやねんねしなを福岡ばら会を先頭に全員百名余りが大きな大きな輪を作って踊り初めました。その踊りのために揃いの手拭いとオシャモジを玉屋さんから全員に同意して頂いたので、それを持ってシャモジを叩く音も賑やかに唄と踊りで懇親会の最後をより一層盛り上げて終ることが出来ました。
来年度懇話会引受ばら会の佐世保ばら会からご案内の挨拶がありまして20時40分終了致しました。終始司会のお役目をなさった玉屋宣伝部の有吉直彦氏のキビキビとした進行ぶりは気持がよい程で、そのお力によるところが多分にありましたことを誌上をかりて感謝いたします。

第2日 6月13日(日)

 久し振りの雨となり植物園行きはご迷惑だった事と思います。幸なことにホテルよりは10分位の処でしたので、バスの方徒歩の方と雨の中を園内の大温室やばら園を思い思いご覧になりまして、バスは太田副会長宅へ着いた頃は晴れて参りました。あついお茶を頂いたり、よく熟れた杏を取って頂いて広大なばら畑を見学の後、またバスで次の大神邸へ着く頃はすっかり晴れ渡りほっと致しました。美しいコンテスト花を咲かせるよりも、ご自身の老後の健康のための遊び場として楽しんでいられるお医者様は作業道具をあれやこれやと改良して一人悦に入っているのも面白い。大変ユニークな存在、『入賞などわしや問題ではない』と仰有るが?
12時30分バスは又山の上ホテルに戻る。昼食の後お別れの挨拶もお名残りおしく、とうとう又来年お目にかかりましょうと袂を分ちました。ほっとしてお茶を頂い時のおいしかったこと忘れられません。